タイ文化の象徴を守りたい。エレファント・キャンプへ食料を!
【One Love Project 2020】文化・芸術の灯に愛をともそう。最前線で命をかける人々へ、世界からの愛を届けよう
ゾウたちはタイの魂!エレファント・キャンプへ食料を
私は、タイ出身のウィプサナワン・ピラヤです。2020年、日本の大学を卒業後、日本で就職を果たし、この「One Love Project」を知りました。
私の母国タイでは、現在、COVID-19の影響により、国際的な支援が必要な状態に陥っています。今、世界からの助けが必要です。
(参照:BBCのニュース)
国内では、すでに様々な支援団体が動いていますが、まだまだ末端で文化活動する団体には、支援が行き届いていません。
とりわけ、タイ全国のエレファント・キャンプで暮らすゾウたちへの支援が、喫緊で必要とされています。
詳細は、下記のストーリーをご参照ください。
一度でもタイに訪れたことのある方は、きっと、タイの美しいビーチや自然、そして大都会であるバンコクの喧騒、そんなタイの魅力に触れたはずです。旧首都スコータイやチェンマイを訪れ、動物たちと触れあい、アジアの熱い風を頬に受けながら、伝統と現代が入り混じったタイの文化を体験されたことでしょう。
そんな深い歴史をもつタイの文化を、私はいつも大切に感じています。
そして、今はなにより、私の国の大切な文化の象徴である、ゾウたちを、世界の皆さんと救いたい。ゾウは私たちタイ人にとって「心」なのです。
ゾウと人間の深いつながりという、自国の文化が危険にさらされている今、皆さんは、タイからのHELPにどう応えられるでしょうか。
あなたの国においてもHELPが必要であれば、私もこの手を差し伸べたい。
今こそ、世界が手を取り合えれば、私はとてもうれしく思います。
――以下、今なぜゾウたちへの支援が必要なのか、そのストーリーをお届けします。
タイ人とゾウの強い絆
冒頭に述べたとおり、現在、タイにおいても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、タイの各地にあるエレファント・キャンプで生活しているゾウと、ゾウたちを世話しながらともに生活し、生計を立ててきた「マホウト」たちが大きな困難に直面しています。
今、そのために私たちにできることを、お伝えしたいと思います。
タイは、ゾウを国の象徴としているほどその生息数が多く、その数は5000頭以上とも言われています。古くは王国を守るための戦いで活躍し、独立を守る上で重要な役割を果たしていたことから、国民にとってゾウたちは「タイの魂」。稀に生まれる白いゾウは、神聖なものとして、王室で生活するほどです。
このように、長い歴史の中で、ゾウたちはタイの文化の一部となり、ゾウとタイの人々の間には密接な関係が築かれてきました。そして、その深い関わりは、現在もタイの各所で続き、地元の生活や、文化的な遺産として、大きな役割を果たしています。
例えば、スリン県にあるイサンや、タイ北東部では、現在においてもエレファント・キャンプで、ゾウと人間がともに暮らし、観光客から収入を得て生活しています。
タイに旅行したさい、エレファント・キャンプでゾウたちと触れ合ったことがある人も多いのではないでしょうか。
エレファント・キャンプのゾウたちは、観光客を乗せて森を歩いたり、芸を披露したりすることが仕事です。ゾウの世話をするマホウトたちは、ゾウを家族や友人のように扱い、世話をするために人生を捧げます。ゾウと人間が互いに強い絆をきずき、支え合いながら生活する、この慣習は、世代から世代へと受け継がれてきたのです。
スリンの地元の人々は、ゾウに敬意を表し、昔から王国のために彼らが果たした役割を讃えるため、毎年、恒例の儀式を開催します。
COVID-19の影響でエレファント・キャンプに食料が足りない!
エレファント・キャンプへは、毎年、数千万人の国内外からの訪問者が訪れ、ゾウたちとのふれあいや、タイの豊かな自然の中での散歩を楽しんできました。その収入により、マホウトたちは生計を立て、ゾウたちに与える大量の食料をまかなってきたのです。
しかし、COVID-19が発生し、彼らの状況は一変してしまいました。ウイルスの感染拡大防止のため、観光業は世界的に停止し、エレファント・キャンプを訪れる人々の数も激減。キャンプのマホウトたちは収入がないため、ゾウに食べ物を提供する金銭的な余裕がなくなり、アルバイトを探すことを余儀なくされています。結果、ゾウたちへは十分な世話が行き届かず、栄養失調などを原因に病気にかかりやすくなってしまっています。
加えて、ゾウたちの世話は、アルバイトの片手間で出来ることではありません。ゾウと共に暮らすマホウトになるということは、ゾウに人生を捧げることを意味するからです。
つまり、アルバイトを探すとしても、マホウト以外の仕事につくことは難しく、こうした窮地に立たされたとき、彼らは苦難の選択として、ゾウを森から連れ出し、都市や観光スポットで、ゾウたちと路上でパフォーマンスをするなど、別の方法を試さざるを得なくなるのです。
そして、私は、そうした「都会を歩くゾウたち」に幼い頃、出会ったことがあります。
大都会を歩くゾウたち
私は、タイの首都、バンコクという大都会で育ち、幼いころは、ゾウは森の中にいるものだと信じていました。そうではないことを目前とした幼少期の出来事が、いまでも深く、心に残っています。
バンコクの露店で家族と食事をとっていたときのことです。通りの向こうから、小さなゾウを引き連れ、バナナを手にした男がやって来るのに気が付きました。男は屋台で食事をする人々に何か声をかけながら、ゆっくりと私たちに近づいて来ます。
両親は、彼らが私たちに近づかないよう身振りで示しました。男は慣れているのか、すぐに方向を変え、車が走るすぐ横の道を、ゾウとともに歩き去りました。
私は困惑して、両親に起こったことについて尋ねました。
「あの人はゾウの餌代を稼いでいるのよ。ほら、あんなふうにバナナを売って――」母が指さすほうを見ると、先程の男が客にバナナを渡していました。
「お客さんがゾウに餌をやっているでしょう?」
母の言葉を聞きながら、私はの胸はいっきに暗い気持ちに包まれました。ゾウが燃えるような熱いセメントの通りを迷い歩いていることが悲しかったのです。
本来、森の中にいるはずのゾウが、コンクリートジャングルの狭い道を歩く様子に、私は彼らが早く森に戻り、休めるよう願いました。しかし、幼い女の子として、私にできることは何もありませんでした。
あのとき、ゾウを助けたいと強く願ったその想いは、年月とともに薄れていきましたが、COVID-19が流行し、世界中の支援を必要としてる団体や人々に寄付を届けるための「One Love Project」の支援先を探すなか、この危機の影響で苦しんでいるゾウたちの記事を見つけたのです。
その記事を見た瞬間、あのとき、大都会を歩いていた小さなゾウの記憶が鮮明に蘇りました。少女だった私が感じた気持ちが何度も押し寄せ、「今度こそ、問題を解決したい!」と、強く感じました。
私はもう力のない、幼い子どもではありません。教育を受け、実社会で変化を起こすことができます。
私は長年、日本で留学生として学び、日本に暮らす人々とその文化に夢中でしたが、私がタイ人であり、タイが私の故郷であることに変わりはありません。
今、海外に暮らす私は、タイという国の代表者でもあり、他国と同じくらい自国の文化を愛し、それを世界と共有したいという、強い想いがあります。その想いが、このゾウたちを救う募金プロジェクトを立ち上げる後押しとなりました。
どうやって彼らを助けるのか
今、私は日本にいるため、ゾウたちへ直接、食料を届けることはできません。しかし、現地でこうした状況を改善しようと尽力する人々をサポートすることはできます。
リサーチの結果、現地ではすでに、タイ・エレファント・アライアンス協会(Thai Elephant Alliance Association)という団体が、ゾウやマホウトたちのために寄付を募り、ゾウのための食料や薬を届ける活動を開始していることがわかりました。
私は、すぐに同団体にコンタクトを取り、支援に協力したい旨を伝えると、同団体のケイさんは、快く快諾してくれました。団体への支援は、まだ国内からのみに留まっており、今回の「One Love Project」の支援が最初の国際的な支援となるそうです。
現在、タイ・エレファント・アライアンス協会は、募った資金を元に、チェンマイや、スリン、アユタヤ、スコータイなど、タイの全国各地の80近いエレファント・キャンプを支援しています。
支援の流れとしては、寄付金が相当額に達し次第、食料や薬を必要としているエレファント・キャンプに連絡を取り、バナナやかぼちゃ、タマリンド、とうもろこしなど、3~5日分の保存が可能な食料品を届けるそうです。
食料の給付に加え、病気になったゾウたちのために薬や応急処置キットを提供し、獣医を連れて、ゾウの健康状態を診に訪問もします。
2020年5月時点で、同団体はタイ国内から1,088,540タイバーツ(日本円で360万円ほど)の資金を募り、全国で 1,400頭以上のゾウを救済しました。
しかし、タイ全国のエレファント・キャンプには5,000頭以上のゾウがいると言われ、新型コロナウイルスも終息の見通しが立たないため、国内の支援だけではとても足りない状態です。
ケイさんは、「One Love Project」で集まった寄付金を「引き続き、全国のゾウに必要な食料と薬を届けるために役立てさせてもらいたい」と教えてくれました。
ゾウたちを失うことは、人類の友人を失うこと
ゾウたちはもちろん、マホウトたちも、ゾウたちが安らげる森という故郷を離れ、ともに大都会をさまよい歩くようなことはしたくないでしょう。
このような形で、ゾウたちとの絆を失うことは、タイ人にとって、国の文化や、私たちの魂の一部を失うことと同義です。
そして、地球上の私たちにとっても、ゾウたち、そして、ゾウと現地の人々が共に築いてきた絆や文化を失うことは、人類のかけがえのない友人と遺産を失うことを意味するのではないでしょうか。
私も、皆さんの多くと同じように、危機に瀕しているゾウたちからは、何千キロも離れています。だからこそ、ゾウたちへ愛を届ける輪を世界へと広げるために、皆さんをこのプロジェクトに招待したいと思います。
今こそ、変化を起こすのです。
ウィプサナワン・ピラヤ