ウクライナの身体障がいを持つ子どもたちの未来を変える!
設備導入へ支援を
凍えるような晩秋の夜、へその緒を切って間もない新生児が、ウクライナ、リヴィヴ市にある児童養護施設の庭に置きざりにされた――。
豊かに見えるヨーロッパの子どもたちだが、ウクライナにおいては、絶え間ない社会的・政治的変化が起因し、現在も不安定な社会情勢にある。
男の子を拾った「チルドレンズホーム#2」に暮らす多くは、身体障がいなどを抱え、里親が見つかりにくい状況にある子どもたちだ。
幼い彼らが成長したとき、自立した生活をおくれるか、人生を施設の中で終えることになるかは、今、適切な治療を受けられるか否かにかかっている。
――しかし、COVID-19の影響により施設の財政状況は、施設を一段を厳しい状況に陥れた。
そこで、ウクライナのIT企業で働くミロスラフ氏は地元の施設を助けようと奔走し、子どもたちの状況を変える解決策になり得る筋電計「M-test」を見つけ出した...。
ぜひ、ストーリーを一読いただき、あなたの「One Love」を、ウクライナの子どもたちに届けていただければ幸いです。
地球上のすべての人は、本当はとても近い。
皆さんは、「世の中のすべての人とのつながりは、実は知人6人分しか離れていない」という仮説をご存知ですか。「友達の友達」などの交友関係を5人分たどれば、6人目のつながりで全世界の人と間接的な知人となれるという考えで、「六次の隔たり」とも呼ばれています。
ちょっと信じられないかもしれませんが、近年、複数の研究により、それが真実である可能性も示されてきました。たとえ地球の裏側にいようとも、実はそんなに遠くはなれた存在ではない...。これが事実であれば、このプロジェクト名にも冠されている「One Love(世界はひとつ)」という理念の、ひとつの裏付けにもなるかもしれません。
NPO法人SPIN Projectで働きはじめた私、Patと、遠くはなれたウクライナの施設で暮らす子どもたちの間には、この「One Love Project 」により、特別なつながりが生まれました。
私たちをつないでくれたのは、ウクライナのグローバルIT企業、ELEKS社で働くミロスラフ・バサラーブさん。
私の会社が運営する、この「One Love Project」に関わるなかで、グローバルな募金プロジェクトの支援先を探していたところ、同僚から紹介されました。
もともと、ミロスラフさんは私の会社の重要なソフトウェア開発パートナーとして、提携してきた1人です。2019年、自社の社員たちはウクライナのリヴィウ市にあるミロスラフさんのオフィスを訪れており、打ち合わせの中で、同市に建つ保護施設で暮らす子どもたちへ彼が行っている支援活動について聞き、深く共感していました。
(自社のメンバーと肩を組むミロスラフさん(左から2人目))
(2019年のミロスラフさんを含めたELEKS社とのミーティング風景)
そして彼こそ、ウクライナの児童養護施設で暮らす子どもたちの現状と、施設が直面している困難について私に伝え、こうして現地の子どもたちと私、そして今、この文章を読んでくれている皆さんを、つなげてくれたのです。
ミロスラフさんが教えてくれたストーリーを読み、子どもたちへの支援の輪が少しでも広がれば、こんなに嬉しいことはありません。
(「チルドレンズホーム#2」での地元お祭りのお祝い)
ウクライナの現状
(ウクライナ、リヴィウ市のビル)
「支援が必要な子どもたち」と聞くと、アジア諸国やアフリカの国々をイメージする人も多いかもしれません。しかし、西洋諸国のひとつであるウクライナにおいても、決して看過できない状況があります。
第二次世界大戦後、世界には戦争や飢餓が原因で、親を亡くしてしまった子どもたちや、中絶が違法であったため、生まれた後に捨てられてしまった子どもたちが数多くいました。
ウクライナも含めたソビエト連邦全体では、そういった子どもたちが、当時60万人以上もいたと言われています。そして現在においても、ウクライナの孤児の数は、人口4100万人のうち約10万人にも達します。
日本にいる孤児たちは約3万9千人ですが、ウクライナは人口が3分の1であるにも関わらず、3倍の数の孤児たちがいるのです。
(Photo by: Isa KARAKUS)
こうした子どもたちが生まれる背景として、ウクライナを含む東ヨーロッパの多くの国における絶え間ない社会的・政治的変化と、それに起因した不景気、そして不安定な社会情勢があります。
一見、豊かに暮らしているように見えるヨーロッパの子どもたちですが、2020年のウクライナのQOL(クオリティー・オブ・ライフ)指数は、80位中、69位。日本の16位と比較しても大きな差があります。
戦後と比べると、生活するための基本的なニーズは満たされ、住環境は大幅に改善されました。しかし、子どもたちの才能を育てるための十分な施設や、自立した生活に備えるための経済的な余裕は乏しいままです。
(ウクライナ、リヴィウ市の風景)
そんな状況において親を失った子どもたちは、一人で駅で寝泊まりし、物乞いをせざるを得ない状況に置かれてしまいます。さらに、身体的な障がいをもつ場合、子どもたちの状況は、一段と厳しいものとなります。
そして、そんな子どもたちを助けるべく設立されたのが、ミロスラフさんの故郷、リヴィウ市にある「チルドレンズホーム#2(Children’s Home #2)」でした。
「チルドレンズホーム#2」の子どもたち
この児童養護施設に暮らす子どもたちの特徴は、身体障がいを抱えているため、通常の子どもたちよりも養子縁組の機会を得られにくく、一生を特別な施設の中で終える可能性が高いということです。
(チルドレンズホーム#2の子どもたち)
ここで暮らす子どもたちの多くは、社会において最も弱い立場にあったと言っても過言ではなく、選択肢のない中で、劇的な状況下に生まれました。
幸い、現在は安全な場所で、スタッフたちの愛を受けながら暮らしていますが、ウクライナの現状を伝えるため、施設の子どもたちが経た壮絶な体験を一部、ご紹介します。
ある子は、アルコール中毒の両親をもち、アパートの部屋の隅でシーツにくるまり横たわっていたところを、警察に保護されました。
当時の彼は衰弱しきっており、見た目は生まれて間もない幼児のようでしたが、実際は4歳を迎えていました。その時の体重はわずか7kg(通常、この年齢の子どもの体重は15kgを超えるはずです)。自分で寝転がったり座ったり、声を発することもできない深刻な健康状態にありました。
「チルドレンズホーム#2」で、彼は歩くことを学び、基本的なコミュニケーションをとれるようになりました。しかし、基本的な身体機能が育つ幼児期に厳しい環境におかれたことが原因となり、現在も、認知能力のいくつかを回復できていません。
(「チルドレンズホーム#2」で遊ぶ子ども)
また、施設の近くに新生児が置き去りにされたケースもありました。凍えるような晩秋の夜、へその緒を切って傷も癒えていないような、産まれたばかりの少年がバッグに入れられ「チルドレンズホーム#2」の庭に置かれていたのです。
くしくもその日は、キリスト教の聖人である聖デメトリウスの記念日。幸運なことに、スタッフの一人が泣き声を聞きつけ、彼を死から救いました。この運命の日を記念し、スタッフらは彼の名を「デメトリウス」からとって、ドミトリーと名付けたそうです。
子どもたちに必要なのは、将来を見据えた支援
(「チルドレンズホーム#2」で新年を祝う様子)
保護された子どもたちは、「チルドレンズホーム#2」で愛情のこもったケアを受けて育っていますが、この施設は一時的な避難所であり、成長とともに、彼らは様々な進路へと進むことになります。
自立した生活をおくる機会を得る子もいれば、残りの人生を特別な施設の中で終えることになる子もいるのです。
ミロスラフさんは、その分かれ道は、施設で成長するなかで、的確に体調や健康が管理され、将来へどのように備えられたかが、大きく関係すると言います。子どもたちには、ベッドや食料、生活のケアだけでなく、将来を見据えた、的確な治療が必要なのです。
そこでミロスラフさんは、この「チルドレンズホーム#2」を一時的な避難所に止まらず、将来に備えることができる施設として、設備を整えたいと考えました。
IT企業でソフトウェア開発などに携わってきた彼は、急を要するニーズに応えるだけでなく、未来を見据えて、長期的に改善を図るこのアイデアを、スタートアップ向けのITトレーニングプログラムと同じだと言います。
投資家が未来あるベンチャーIT企業に投資し、育成してビジネスを成功させるように、身体障がいをもつ子どもたちも、必要な医療設備を提供し、適切なトレーニングや治療を与えることで、自立することができる可能性が高まるのです。
将来に備えた準備こそ、今、施設で必要とされていることなのです。
子どもたちの健康状態を性格に把握する筋電計「M-Test」を導入したい!
Children's Home#2で働く医師と何度も話し合った後、最初の最も重要なステップは子供が正しく診断され、進行状況を常に監視しながら個別の治療とトレーニングが行われるようにすることであるという相互合意が交わされました。
特殊な診断機器である筋電計を使用すると、子供をより正確に診断し、適切な治療を受けることができます。この装置は、神経損傷のごく初期の段階を特定するのにも役立ちます。
(職場でのM-テスト機器)
子供たちは家に配属される前に調べられます。ただし、子供の健康状態の最初の診断は別の医療機関によって行われることが多く、残念ながら正確ではないか、間違っている可能性もあります。これらの医療機関は相互に十分に接続されていないため、最初の検査を検証する機会はなく、正確な診断と調整された治療を受けるための唯一の方法は、それを社内で提供することです。ただし、これは児童館の標準装備を超えています。
児童養護施設での理学療法#2)
ミロスラフは、そのような機器が研究機関によってウクライナで地元で生産されていることを発見しました-筋電計「M-テスト」。筋電計と呼ばれる特殊な診断機器を使用すると、子供をより正確に診断し、適切な治療を受けることができます。この装置は、神経損傷のごく初期の段階を特定するのにも役立ちます。
(職場でのM-テスト機器)
Children's Homeの医療スタッフは、M-Testが子供に対する長期的なサポートのための最良のソリューションであることに同意しますが、冒頭で述べたように、ウクライナは財政的に困難な状況にあり、政府はそのような保護施設に助成するのに十分な資金を持っていません。
「M-テスト」を購入して操作するには、約5900米ドルが必要です。これは、施設に予算がないためです。
「私たちは、子供たちが誤診されないことを確認し、個々の治療の進捗状況をフォローアップできます-子供の家の主治医のコメント-筋電計なしでは、進行状況が期待どおりに進むとの仮定に基づいて子供たちを治療することがよくありますが、それから子供の健康にはほとんど何も改善されないことを観察してがっかりした。私たちがときどき無力であるのを見るのはとても悲しいことです。」
COVID-19は施設の財政状態を悪化させる
日常生活のあらゆる側面を脅かすCOVID-19の爆発は、子供たちに深刻な打撃を与えました。ウクライナの寄付のほとんどは、COVID-19患者を治療する病院の医療関係者に防護服を提供しようとしています。
孤児院の子供たちは、貧しい生活環境のために感染のリスクが高く、そのため、現在、医療処置は、子供たちのための予防的で安全な空間を作ることに集中しています。
しかし、子供たちは常に成長しているため、時間は子供たちの体にとって最も重要です。 Children's House#2の機器の供給は無期限に延期される可能性があります。言い換えれば、これは子供たちが認知能力と身体能力を発達させる機会が少ないことを意味します。それが、私たちが今サポートを遅らせることができない理由です。
6人目の知人に愛を届けましょう!
私たちのチームでは、プロとしての彼を超え、優しい人間として彼を示すミロスラフの熱意に驚きました。私たちがどこまで離れていても、どこで生まれ、どこで私たちが話すのかは、私たち全員を結びつける明白でない文字列がまだあります。
このプロジェクトに参加することで、あなたはあなたが思っているよりもあなたとより密接に関係している人々をサポートしているかもしれません。
(チャリティーイベント中の子供たちの家#2のボランティア。ミロスラフは世界中の子供たちが愛され、支えられることを願っており、彼は「ワンラブプロジェクト」への参加を呼びかけています。)