持続可能で豊かな海を守りたい

持続可能で豊かな海を守りたい

〜 豊かな生命の象徴、ジンベイザメを追う 〜



地球上で生きている、全ての生き物は、やがては海に還る。


プランクトンが豊富に発生する赤道付近の海にジンベイザメはいる。彼らは人間から漁業の神様と謳われるほどに、その生息地はあらゆる魚が集まる楽園のような海として知られている。そして、実のところ、大地の上で生きる私たちの生活も、その楽園に大きく関係していることをあなたは想像したことがあるだろうか。


やがて地上で生き抜いた生命たちは大地にとけ、栄養となり、雨とともに川に流れる。そして、海に宿りし時、太古の時代から続く壮大な生命エネルギーの物語の終着点として、大量のプランクトンという形でこの世に生まれ変わるのだ。

そして、同時にそれは食物連鎖の出発点でもある。その無限に広がるプランクトンたちは潮の流れに導かれ、地球上で命を紡ぐ源として魚たちの餌になる。そして魚は鳥をはじめとする地上生物に食され・・・、こうして物語は永遠と繰り返されていくのだ。


ジンベイザメは、何度も何度も繰り返される、生命の始まりと終わりに君臨する巨大な生物、命の象徴なのだ。


地球にいる生き物すべては、やがて海に還る。


彼らは、豊かな海にだけ現れ、豊かなエネルギーと新しい生命たちが交錯する場所にいる。

つまり、彼らジンベイザメは、そんな私たち生命の象徴・生態系の守り神なのかもしれない・・・


――広大な地球のどこまでも青い海。

優雅に泳ぐジンベイザメたち。


© Conservation International/photo by Mark V. Erdmann


想像してみてほしい。この未知なる海洋冒険を追うことは、単なる保護調査だけではなく、人間が豊かに暮らすためのヒントに結びつく旅でもあるということを。


2012年、世界でもめずらしいジンベイザメのタギングに成功。世界的第一人者の海洋生物学者、マーク・アードマン博士が先導するこうした活動をはじめ、その活動を支え、地球環境問題に取り組む団体こそが、コンサベーション・インターナショナルだ。全世界の生物多様性ホットスポットと呼ばれる地域(地球上の90%の生命が集中している場所であり、人類による破壊の危機が最も進んでいる地域でもある、人と自然のかかわりが深い地域)を中心に、彼らは自然資本の保全を実に幅広く実践している団体なのだ。


©Shawn Heinrichs


――国際NGOコンサベーション・インターナショナル(CI)日本支部代表、日比保史。彼は幼いころから抱いていた想いを忘れず、十分な社会経験を経た後、この団体の門を叩いた。


「君はこの戦いに勝てるのか」


そのCI創設者の一言で、日比の人生は大きく動き始めたのだった。


日比は幼い頃から望遠鏡で星を眺め、科学雑誌を読みふける宇宙好きの少年だった。彼は、ある日、科学雑誌で目にした「地球温暖化」の実情に衝撃を受ける。すべての人が、加害者になりうる大問題だと気が付いたからだ。自分はこの戦いに勝てるのか。「勝てる、勝たなくてはならない」次の瞬間発した言葉がそれだった。


地球環境保全という大志を胸に、日比は世界を舞台に躍動する。そこで様々な問題に直面する中で、たどり着いた一つの真実。それは、地球の環境を守り続けるということは、人の生き方、社会の在り方、そのすべてを変える必要があるということだった!


その途方もないゴールに向かって歩み始め、数々の実績を積み上げたある日、日比の情熱がマーク・アードマン博士の活動にもつながることとなる。透き通った海に揺らぐ珊瑚の美しさ、色鮮やかな魚の群れ、ジンベイザメが深く海に潜る姿――そのすべてをシンプルに愛し、守り、次の世代に届けたいという彼らの想いが、国境を越え、大規模なジンベイザメのタギングプロジェクトとして合致し、今、それが始まる・・・!!


謎のベールに包まれていたその生態や、生息範囲を解明! 同時に様々な実態が浮き彫りになる。例えば、絶滅危惧種となってしまった理由に、豊かな生活を求め続ける私たち人間が、密接に関わっていたり・・・。森、山、川、海という生態系の循環の中で、私たち一人ひとりが、決して無視できない海の現状が徐々に明らかになっていく!


自然界では、何億年もの時間をかけて、美しい食物連鎖のエコシステムが成り立つ一方、人間界では、消費するだけの資本主義が社会システムの根幹になり、自然界の調和を壊している。何かを生み出す力もある人間、その力があるにも関わらず、現状、消費することの方が比率として大きくなっているのだ。

サイエンス・フィクション、生命、地球の神秘にあこがれを抱いた少年から、大人へと成長を遂げた日比が、今、地球環境保全の最前線で葛藤し、自らの命を燃やす! そのドラマに触れた時、私たちの意識が少しでも変化すれば、人類の次のステージが見えてくるかもしれない。



――さあ、私たちもジンベイザメと、日比やマーク博士と共に、海の旅に出かけてみようじゃないか。

日比保史が、世界を舞台に繰り広げる自らのストーリーと共に、

世界の現実を、ジンベイザメの旅を通じて、今、語る・・・。



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