「世界のみんながしあわせになるコーヒー」プロジェクト

「世界のみんながしあわせになるコーヒー」プロジェクト

農家を重労働から解放!ローテク機材を贈ってフェアトレードのコーヒー作りを支えよう!

――コーヒーの香りで、まどろみから目を覚ます。


それは、日常にありふれた出来事で、特別なことではないかもしれません。

けれど、もし、コーヒーがあなたの元に届くまでに紡がれた数々の物語を知ることが出来たなら、コーヒーの豊かな薫り、深みのある苦みや優しい酸味に、特別なものを感じると思いませんか?


……ここで、とあるコーヒーの物語を、あなたに贈ります。


そのコーヒーは、標高2,000m級の山が連なる、フィリピンのコーディリエラ地方に住む山岳民族の人たちの手によって、作られています。


コーヒー栽培、と聞くと、見渡す限りの土地に整然とコーヒーノキが植えられ、たくさんの労働者たちにより、大規模な機械を使って生産されている様子を想像するかもしれませんね。

しかし、コーディリエラでは、山岳民族の農家たちが家族単位で栽培し、その手で苗作りから、収穫、収穫後の精製まで行っているのだそう。


コーヒー豆が生まれるまでには、実はけっこう時間がかかります。

コーヒーノキを植えて、赤い実「チェリー」が実るまでには3~5年の時間が掛かります。そして、コーヒー豆はチェリーの中で眠っています。チェリーから豆を取り出し(精製と言います)、カラッとなるまで乾燥させて、ようやく皆さんが良く知るコーヒー豆として、市場に出荷されていくのです。


――さて、コーディリエラでは、どのようにコーヒー豆を精製しているかというと、原始的ともいえる方法で精製されています。


コーディリエラの農家には機械がないため、代わりに「臼と杵」という、昔ながらの方法で精製されているのです。



餅をつくように、何度も杵を振り上げ、潰さないように気を付けながら、臼の中の無数のコーヒー豆をつく――何時間も、何日もかけて、生豆を精製する農家の手には、たくさんのマメが出来ては潰れ、その手のひらは厚く硬くなっていることでしょう。


いまだこうしたすべてアナログの力仕事によって、コーディリエラのコーヒーは作られているのです。


そしてこの作業があまりに大変であることから、一つの問題が浮上しています。

コーヒー栽培を諦める農家が出てきてしまっているのです。


――そんなに大変なら、コーヒー栽培は止めて、別のことをしたらいいんじゃない?

そう思う人もいるかもしれませんね。


しかし、農家にコーヒー栽培を続けてほしいと強く願う一人の女性がいました。

彼女は、大変なその精製作業を少しでも楽にするため、コーヒー豆の精製に必要な機材を届けるプロジェクトをここに立ち上げました。



農家にコーヒーを栽培を諦めてほしくない


――植林をしてるんだけど。すぐに燃やされちゃうのよね。


そうこぼすのは、反町 眞理子(そりまち・まりこ)さん。コーディリエラの美しい山々から煙が立ち上り、森が燃やされてしまうその光景を憂いての言葉でした。



実は、コーディリエラの山岳民族たちは、収入につながる畑を作るために、森を燃やしてしまうことが多々ありました。元々、フィリピンは自然災害の多い国。森から木が消えてしまえばさらに多くの災害が起きてしまうかもしれません。


そこで、2001年、反町さんは数名の仲間と共に環境NGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(以下、CGN)」を立ち上げ、植林活動や環境教育活動をすることにしたのです。


最初は、ただ木を植えるだけでしたが、こっそりと植えた苗木が引っこ抜かれたり、火が放たれて燃やされたりといったことが発生。そこで、植林する木にコーヒーノキを加え、森を育てながら、コーヒーから収穫もできるという「アグロフォレストリー(森林農法)」を取り入れてみるよう、農家に提案することにしました。



コーヒーとともにできるだけいろいろな植物を育てれば、野鳥や虫たち、野生動物も戻ってきて、山岳民族の人たちが自然と共生する伝統的な暮らしを取り戻すことにもつながります。


次第にアグロフォレストリーを取り入れる村が増え始め、コーディリエラでのコーヒー栽培は広がっていったのです。


――しかし、農家がコーヒーを栽培するには、時間も労力もかかります。さらに、収穫後の精製作業を機械に頼らず手作業ですることから、品質にばらつきが出てしまい、まだまだ多くない出荷量は欠点豆を取り除くことで、さらに少なくなってしまいます。


そうした状況から、コーヒー栽培を諦める人が出てしまい、再び森から煙が上がり始めてるのです。


そこで反町さんは、農家が「臼と杵」を手放し、重労働から解放されるよう、コーヒー豆の精製に必要な機材を農家に届けるプロジェクトを立ち上げることにしたのです。



世界のみんながしあわせになるコーヒーを、みんなでつくる


コーディリエラからやって来たこのコーヒーを買えるお店が、日本にあります。

お店の名前は「シサム工房」。“ 社会で立場の弱い人たちとよりいい形でつながって生きていきたい ” という強い想いから、1999年に水野 泰平(みずの・たいへい)さんにより設立されました。


水野さんは、10年前に反町さんと出会い、フィリピン農家の話を聞き、実際に現地を訪れ、農家の物語に触れて共感した一人。



――お客様の元に、コーヒーが出来上がるまでのストーリーも届けられたなら、新たな味わいを感じてもらえるかもしれない。


そうした想いから、優しく甘い香りが特徴的なコーディリエラ・コーヒーに、物語が綴られたスリーブを付けて、多くのお客様のもとへコーヒーを送り出してきました。



そして今回、より多くの人たちへ物語の共感の輪を広げようと、農家へ機械を届けるプロジェクトにシサム工房も参加する決意をしました。


市場には無数の商品が並んでいて、私たちはその中から選び、購入します。

自分が手にした商品を、誰が、どこで、どのようにして作ったものであるのかを知れたなら、ただの商品ではなく、特別な物としてきっと大切に感じられると思います。


そしてもし、購入を通じて、生産者が大変な労働から解放されたり、その土地の森を豊かにする一歩になったなら。


あなたが朝のまどろみから覚めるために口にする1杯のコーヒーが、特別なものに変わり、優しく甘い香りを放つ白い湯気のなかに、遠いフィリピンのコーディリエラや、農家の人々の顔が思い浮かぶかもしれません。


……ほら、コーディリエラのコーヒーを、一口、飲んでみたくなって来ませんか?


ここまで物語を読んでくれた皆さんには、ぜひ、このプロジェクトを通じ、一緒にコーヒーづくりに参加してほしいと思っています。


あなたの一歩が、コーヒー農家の重労働を軽減し、おいしいコーヒーづくりへの大きな一歩となり、それは、山岳地方の貴重な森を守ることにも導くのです。


世界のみんながしあわせになるコーヒーをづくりに、一緒に参加していただけたらと思います。


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■ シサム工房

1999年4月25日に京都の郊外で小さなフェアトレードショップとして誕生。

学生時代に人権や貧困の問題と出会い、シサム工房の代表・水野 泰平(みずの・たいへい)が、社会経済的に立場の弱い人たちとよりいい形でつながって生きていきたい、と強い想いを持ったのが始まり。

創業以来、オリジナルの商品開発を行い、商品の質やデザイン、提案する空間にこだわりながら、一貫してフェアトレードにチャリティではなく、事業として取り組む。

現在、京都、大阪、神戸、吉祥寺に直営8店舗を展開している他、全国300の小売店を通して、コーヒーや、アパレル品、雑貨、インテリア商品などを販売している。

* シサムとは、アイヌ語で「よき隣人」 を意味する言葉。



■ コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(Cordillera Green Network )

2001年フィリピン共和国ルソン島北部山岳地方の中心都市・バギオ市で、在住の日本人・反町 眞理子(そりまち・まりこ)と日本人1名、そして3人のフィリピン人によって設立。山岳地方の環境保全とそこに暮らす先住民族の貧困削減・生計向上を主な目的とし、森林再生と水源涵養のための植樹プロジェクト、先住民族の伝統文化をベースとしたアートを活用した環境教育プログラム、持続可能な地域資源を活かした適正技術によるエネルギー事業、アグロフォレストリー事業などを行ってきた。2011年から2018年まで継続したフィリピン企業のCSRによる森林再生事業ではタバコ栽培農家とともに毎年100万本の植樹を達成。アグロフォレストリー事業では山岳部の気候や土壌に適したアラビカコーヒーの栽培を推進し、2015年の開始以来100万本近い植樹を山岳地方各地で行ってきた。(うちコーヒーは16万本強)

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プロジェクト誕生の物語をVibes.mediaで読む





(文・SPIN Writer)