コロナ禍からのリスタート!地域の未来へつなぐ子供たちが一生懸命に活動できる環境を整えたい!

コロナ禍からのリスタート!地域の未来へつなぐ子供たちが一生懸命に活動できる環境を整えたい!

子どもたちが自分で戦略を考え、動く

刻々と、状況が変わるサッカーの試合。
グラウンドを駆ける子どもたちが、互いに声を掛け合い、パスを回す──

「FIFAワールドカップカタール2022」において、残念ながら日本は敗退してしまいましたが、強豪国を相手に健闘するチームの姿に心を震わせた人も、きっと多いと思います。

佐賀県にあるサッカークラブ「FCソレイユ」では、日本代表選手たちのように、子どもたちが自分たちで対戦相手や状況を見ながら戦い方を変え、プレーする姿があります。

クラブで大切にしていることは、“いかに試合に勝つか”というより、サッカーを通じて心を養い、自立心と社会性を養うこと。

「解答を与えることでチームは次のステージに行けるかもしれない。けれど、子どもたちが自分たちの力で、何かの答えを導き出すこと自体が大切だと思っています」

そう語るのは、クラブの代表・上曽山 拓史(かみそやま ひろし)さん。試合中に子どもたちが自分たちで考えた戦略に対し、口出しすることはせず、見守ることを大切にしています。


こうした指導の背景には、現代の子どもたちの自立性が関わっています。
かつては、子どもたちは目標のためにギラギラと魂を燃やし、勝つことに飢えていた姿がありました。しかし、近年では“失敗しないように”という選択をしがちになり、なかなか自発的にチャレンジすることも少なくなりつつあります。

クラブにやってきた子の中にも、最初はなかなか自分を出せない子どももいます。
しかし、サッカーはチームスポーツ。“上達したい!”“勝ちたい!”という想いは、一人の力だけではどうすることもできません。

そこで、クラブでは一人ひとりの子どもと向き合い、彼らが夢や目標に本気で取り組み、自立性を養いながら、集団で行動する責任の大切さなどを、指導してきました。
子どもたちに対し、大人が何かをやってあげる、というよりも、自分たちで気付き、学び、行動できるようにする指導です。
すると、サッカーを通じ、子どもたちは技術面を向上させるだけでなく、人としても成長しないといけないということを理解し始めます。
そうして少しずつ、自分の気持ちを表現し、チームと共に成長をしていくのです。


創立15年を迎えたFCソレイユは、これまでに800名以上の卒業生をプロクラブの育成組織や九州各県の強豪サッカー部、地元の県立高校に輩出してきました。
現在は幼児から高校生、そして社会人までの約200名が所属し、J1リーグ「サガン鳥栖」のサッカースクールを除けば、佐賀県内最大のクラブとなっています。

子どもたちの意欲に影響を与える、新型コロナウイルス

サッカーを通じ、社会に出たときに、自ら率先して行動できる大人になるための力を身につけられるよう、環境づくりをしてきたFCソレイユ。
今年から農業事業も開始し、子どもたちが作物の成長や収穫を楽しめる体験もできるようになりました。また、子どもたちのスケジュールに合わせた個別指導塾の運営も始まり、各家庭状況に合わせた習い事のサポートが行われています。

“子どもたちの成長”を何より大切に考えるFCソレイユですが、2020年より拡大した新型コロナウイルスの影響により、子どもたちの意欲に対する懸念を抱くこととなりました。

新型コロナウィルス感染症拡大に伴う緊急事態宣言発令に伴い、一時、クラブでは活動を休止しました。
長い自粛期間によるスポーツ意欲の薄れや、スクール体験入会の開催中止の影響により、新規入会者がコロナ禍前と比べ減少傾向となっています。
例年開催してきたスポーツ大会も中止・縮小が相次ぎ、集客・宣伝面での影響も大きなものとなってしまったのです。
地域での試合ができなくなると、過去に見せていた地域の盛り上がりも息をひそめてしまいます。
そうした状況の中、子どもたちの意欲を高めることは簡単なことではありません。

そこで、FCソレイユは、新たなプロジェクトを立ち上げることを決断しました。

子どもたちが生き生きと、サッカーを楽しめるように

プロジェクトでは、現在活動している子どもたちがいかに楽しく、意欲を高めていけるかを考え、以下、3つに挑戦する予定です。

①気持ちを新たに試合を迎えられるよう新ユニフォームを作成する
新しいユニフォームは、シンプルに、気持ちが上がるもの。
気持ちを新たに、サッカーを楽しめるよう新たなデザインのユニフォームを手掛けます。

②トレーニング用具運搬車両を購入する
新型コロナウイルスの影響もあり、グラウンドが使えないこともあります。そうすると、空いているグラウンドに行くため、様々な会場を転々としてトレーニングを行うことになります。
そこで、子どもたちが出来る限り、いつも使っている用具でトレーニングを行えるように、運搬車両を購入します。

③人工芝がある会場でプレーする
通常使っている会場は、芝のない土のグラウンドです。人工芝のグラウンドは使用料も安くなく、普段はあまり使う機会がありません。
しかし、やはり土と芝では異なります。子どもたちも、人工芝でプレーすると、生き生きとした顔つきになり、気持ちの入り方も違ってくるのです。
そこで、子どもたちに人工芝の会場でプレーができるようにします。

サッカーが繋いだ、過去と現在の教え子の未来


新たに制作するユニフォームを身につけ、いつもの道具を使い、芝生のグラウンドを楽しく走り回る子どもたち──。

「スポーツに熱中している彼らの姿を見て、新たに他の子どもたちがスポーツを始めたいというきっかけを作り出したい」

子どものころからサッカーを楽しみ、サッカーを通じて人としての成長を学んできたからこそ、FCソレイユ代表の上曽山さんは、その体験を、他のコーチたちと一緒に、子どもたちへ届けたいという想いがあります。

実は、現在同僚として活動しているコーチの中には、かつて、上曽山さんが指導をした子どもが大人となり、クラブにコーチとして戻ってきた人もいます。
さらに、新たに始まった個別指導塾では、スタッフたちは全員、かつての教え子たちです。スポーツの道を進まずに、それぞれの分野を歩んできた生徒たちが、大人になってもFCソレイユを通じて繋がり合い、地元で子どもたちの育成に尽力しているのです。

サッカーがもたらすものは、人としての成長であり、人や地域との絆でもあります。

まだ新型コロナウイルスの影響がある現在。そうした成長や繋がりを、スポーツを通じて楽しく得られるよう、このプロジェクトがその後押しになることを願っています。

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■プロフィール
上曽山 拓史(かみそやま ひろし)

高校卒業と同時に小学生年代のサッカークラブで指導を始める。
指導を始めるのと同時期に審判としての活動を始める。
20歳で当時九州地域では最年少でサッカー2級審判の資格を取得しJリーグの審判を目指しながら指導を継続する。
この年から中学生年代での指導を始める。
23歳で独立し小学生年代のサッカークラブを設立。
29歳でクラブを合併させ現在のクラブを設立。
今に至る。